朝の和食が体脂肪を減らす?
体脂肪を減らして肥満を改善するには朝ごはんが重要な役割を演じ、「パン食」よりも「ご飯食」の方がダイエットにも生活習慣病の予防にも有利に働くという実験結果があります。
従来より日本人の肥満と生活習慣病の増加は、伝統的な和食中心の食生活が欧米化した結果だということが指摘されてきました。
また、朝食抜きの食生活が肥満や生活習慣病を招くことも指摘されてきました。そしてこの実験結果はそれらを裏付けるものとなっています。
朝食とご飯食は体脂肪と生活習慣病を減少
朝食とご飯食は体脂肪を減少させやすく、生活習慣病も招きにくいようです。
下の各機関の共同研究による「平成16年度 ごはん食基礎データ蓄積事業研究報告書」には、その結論が以下のようにまとめられています。
(研究を行った各機関)
京都大学大学院人間・環境学研究科応用生理学研究室
岡山県立大学保健福祉学部栄養学科
独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究部
ごはん食vs 高脂肪食
~ごはん食は食後にたくさん熱をつくる~
「朝食抜き&昼食まとめ食べ」の落とし穴
~摂取エネルギーは同じでもトータルの熱産生は低い~
高脂肪食を食べるとイライラ
~高脂肪食は血糖値を上げない~
高脂肪食を食べるとドキドキ
~朝食欠食&高脂肪食多食で心拍数は急上昇~
同じだけ食べても燃えにくい
(=エネルギー消費が増えにくい)ヒトもいる
~朝食をたべてしっかり体を動かそう!~
この実験では朝食(9時)と昼食(12時)を含めた朝から午後3時までそれぞれ、下記の4つのパターンの食事方法が体脂肪の燃焼と肥満抑制効果、及び生活習慣病へどのように関わるのかを調べるものとなっています。
(1)「(朝)ご飯食・(昼)ご飯食」
(2)「(朝)欠食(昼)ご飯食2食分」
(3)「(朝)高脂肪食(昼)高脂肪食」
(4)「(朝)欠食(昼)高脂肪食2食分」
それぞれ4つのパターンの食事方法では、朝昼の合計の摂取カロリーは同一です。
血糖値からみたご飯食のメリット
血糖値ついてみると、朝昼に欠かさずご飯食を食べる(1)では「リズミカルな血糖値の動きが作り出されて」糖尿病予防に有利だが、朝食を抜く(2)では朝が低血糖で昼には高血糖状態が継続する。
高脂肪食の(3)や(4)では「食後30分後に一時的に血糖値が上昇するものの、速やかに欠食時と同程度まで下降」する。
糖尿病を予防する観点から
糖尿病を予防する観点からは朝食を抜かず、朝食と昼食にご飯食の炭水化物を中心とした食生活が重要であるということになります。
また、朝食を抜いて昼食にまとめ食いをすることは、急激な血糖値の上昇を招いて危険であることが読み取れます。これらのことから、朝昼が少なめで夕食にまとめ食いを行うことも、血糖値の急上昇を招いてしまう悪影響が予測できます。
それから、血糖値の急上昇を防ぐには、ご飯の精米度を下げることも有効であると指摘しています。
満腹感からみたご飯食のメリット
朝食を抜けばお昼まで飢えを感じるのは当然ですが、同じ摂取カロリーでも高脂肪食である「パン食」よりも高炭水化物食である「ご飯食」の方が食後の満腹感が高く、その後も「ご飯食による満腹感優位」はずっと続く結果となっています。
満腹感からみた炭水化物食の優位性について、「高脂肪食は腹持ちが良い、と俗に言うが、必ずしもそうとは言えないことが判明した」と結論付けています。
ご飯食は体脂肪を燃焼させる
体脂肪の燃焼という観点からは、高脂肪食である「パン食」よりも高炭水化物食である「ご飯食」の方が食後の熱生産による消費カロリーが大きいという結果となっています。
朝に和食を食べることは体脂肪の燃焼に加えて、体温を上昇させる観点からも有利です。
食事に起因する熱生産量(kcal)の朝から午後3時までの合計は、
(1)44.3 ± 8.1
(2)21.5 ± 5.2
(3)33.5 ± 5.2
(4)25.7 ± 7.1
(1)=(朝)ご飯食・(昼)ご飯食
(2)=(朝)欠食(昼)ご飯食2食分
(3)=(朝)高脂肪食(昼)高脂肪食
(4)=(朝)欠食(昼)高脂肪食2食分
以上の結果から、朝食を欠かさないご飯食が、食後の熱産生を高める「抗肥満効果」を有すると結論付けています。
上記の結果からは毎朝規則正しく和食を摂取する食生活を行えば、朝食抜きの食生活と比較して一年では1.1kg以上の体脂肪が運動せずに熱生産として燃焼されることが読み取れます。
また、食事を1回にした場合と4回に分けた場合では4回に分けた場合の方が、熱生産による消費カロリーが大きいということも指摘されています。
高脂肪食の心臓血管系への影響
高脂肪食は高炭水化物食(和食)に比べて、心臓血管系へ悪影響を与えるようです。
「朝食欠食後に高脂肪食を2食分摂取した場合の平均心拍数は、摂取前よりも約15拍も増加しており、高脂肪食の心臓血管系への影響が示唆」と指摘されています。
朝食を抜いた高脂肪食による2食分のまとめ食い(4)は、心臓に関連する疾病を招くようです。
体脂肪の燃焼に不利な体質もある
体脂肪の燃焼に不利な体質があるようです。
UCP1(脱共役蛋白質)の遺伝子に異変を持つ人(日本人全体の約20%)では、(1)から(4)のどの食事方法においても、遺伝子に異変を持たない人に比べて熱生産による食後の消費カロリーが少ないようです。