カテキンの概要
カテキンは強い抗酸化作用や殺菌作用があることで知られるポリフェノールの一種です。カテキンは緑茶の渋味のもととなるポリフェノールの成分です。
カテキンは抗酸化作用、抗菌作用(虫歯菌の増殖を抑えるなど)、活性酸素の消去効果、コレステロールの上昇抑制効果、血糖や血圧の上昇を抑制する作用などが知られています。カテキンは抗アレルギー作用も有するようです。
カテキンは適度に摂取することで、がんを抑制する作用があるのではないかといわれています。カテキンは緑茶に多く含まれていますが、緑茶の産地である静岡県中川根町の男性の胃がんによる死亡率は、全国平均の5分の1であるといわれています。「緑茶のカテキンはがん予防に有効?」。
カテキンの種類と作用
緑茶にはカテキンが含まれていますが、ウーロン茶や紅茶にもカテキンが変化した形で含まれています。お茶の種類には様々ありますが、お茶ほど世界的に多く飲まれるものは多くありません。
日本人にとって一番なじみのあるお茶の種類といえば緑茶でしょう。緑茶は茶葉を蒸した後に乾燥させたもので、茶葉を発酵させない状態で飲むものです。そのため緑茶には、カテキンがそのままの形で含まれています。
ウーロン茶は緑茶とは違い、茶葉を半分まで発酵させたものです。摘み取った茶葉を途中まで発酵させ、その後に熱を加えて発酵を止めます。
緑茶のカテキンとは種類が異なりますが、ウーロン茶にはウーロン茶重合ポリフェノールというものが含まれています。ウーロン茶重合ポリフェノールはカテキンが発酵の過程で酸化することで生成されますが、リパーゼ阻害に基づく抗肥満作用があることが報告されています。
紅茶は茶葉を完全に発酵させたものです。茶葉を完全に発酵させることで、紅茶独特の色合いと香りを引き出します。
紅茶にも茶葉にもともと含まれるカテキンが酵素で酸化することで生成される、テアフラビンという成分が含まれています。テアフラビンにも虫歯抑制作用や抗菌作用など、緑茶のカテキンとよく似た作用があります。ただし紅茶には、鉄分の吸収を阻害する作用があるようです。
カテキン類にはこのように発酵させない形で存在するカテキン、半発酵により生成されるウーロン茶重合ポリフェノール、完全発酵で生成されるテアフラビンと種類は異なりますが、どれもが健康に好影響を及ぼす作用を有する点では共通しています。
カテキンとお茶の渋み
お茶の渋みはカテキンによるものですが、カテキンにも複数の種類とともに渋みの強弱があります。緑茶とウーロン茶や紅茶の渋みが異なるのは、それぞれを構成するカテキン類の種類と含有量が異なるためです。
お茶を構成する主要なカテキンにはEGCG、EGC、ECG、ECという4つの種類があります。緑茶類にはEGCGとEGCの含有量が多く、ECGとECの含有量はそれに次ぎます。
EGCG=エピガロカテキンガレート
EGC=エピガロカテキン
ECG=エピカテキンガレート
EC=エピカテキン
ウーロン茶ではこれらの各成分が、緑茶に比べて概ね4分の1から5分の1程度です。紅茶ではEGCGとEGCの含有量がゼロになり、ECGが同程度、ECが3分の2程度の含有量となります。
すなわちお茶の種類によるカテキン類の含有量は緑茶が最も多く、その次にウーロン茶、最も少ないのが紅茶ということになります。茶葉の発酵に伴って、カテキン類の含有量は減少するようです。
カテキンのうちで渋味と苦味がともに強いのはEGCGとECGで、渋味が弱いが苦味があるのはEGCとECとなります。そのようなわけで緑茶の渋みが一番強く、ウーロン茶と紅茶の渋みは緑茶よりも弱くなります。
玉露やかぶせ茶は渋みと苦味が少なくうまみが多いという特徴がありますが、これは栽培中に遮光することでEGCとECの含有量が少なくなるためです。
お茶の渋みの元となるのはタンニンなのですが、お茶のカテキン類はタンニンを構成する成分です。タンニンの約85%がカテキン類で占められています。
カテキンの抗がん作用
カテキンには抗がん作用があるといわれています。
カテキン類で抗がんに作用するのは、主にEGCGであるといわれています。お茶類でEGCGの含有量が多いのが緑茶類であることを考えると、抗がん作用が期待できる種類も緑茶であるといえるのかもしれません。また、EGCGにはコレステロールの吸収を阻害する作用があるともいわれています。
オリゴ糖には腸内の悪玉菌を減少させる作用がありますが、カテキンにも同様の作用があるようです。オリゴ糖が腸内悪玉菌を減少させるしくみは、オリゴ糖の摂取で増える腸内善玉菌の生産物(酢酸と乳酸)が悪玉菌を死滅させることによるものです。
これに対してカテキンが悪玉菌を減少させるしくみは、カテキンの殺菌作用によるものです。カテキンにはビフィズス菌に対する殺菌作用はなく、悪玉菌に対しては殺菌作用があるようです。カテキンの殺菌作用は摂取する間のみ有効で、摂取をやめると腸内細菌群の構成も元に戻るようです。
お茶の主要なカテキン類である4種類それぞれに殺菌作用がありますが、EGCGとECGの殺菌作用が比較的高いようです。
がんの抑制はカテキンとビタミンAの併用で
がんの抑制にはカテキンに加えて、ビタミンAを同時に摂取するとその効果が増すようです。
九州大学大学院農学研究院 生物機能科学部門の立花宏文助教授(食糧化学分野)らのグループによる研究結果です。同助教授によれば、
「EGCGを鍵の分子とすると、その標的は鍵穴に相当する67kDaラミニンレセプター(67LR)と呼ばれるタンパク質」であり、
「EGCGがビタミンAを与えたがん細胞の表面にたくさん結合する現象に注目。これはビタミンAによって細胞表面の鍵穴の数が増えるからだと考え、そのようなタンパク質の遺伝子を探し、67LRを見つけた」といいます。
また、「67LRを発現させたがん細胞に、緑茶数杯を飲んだ際に人が血中に取り込むとされるごく微量のEGCGを加えると、67LRが発現していない細胞に加えた時に比べ、がん細胞の増殖を約4割抑えることが分かりました。一方、67LRの働きを失わせたがん細胞はEGCGを加えても増殖を抑制できませんでした。」
上記の研究結果が意味するところは、まずビタミンAを摂取すると、がん細胞に対してカテキンを取り込ませやすくすることができます。
そしてがん細胞がこのような状態であるときにカテキンを摂取すると、そうでない場合に比べてより多くのがん細胞の増殖を抑えることができるということです。
従って緑茶を飲むときには、ビタミンAの摂取を併用した方が抗がん作用が上昇するようです。
カテキンの吸収率
カテキンの吸収率は非常に悪いため、お茶としてそのまま飲んでもそのほとんどが吸収されることなく排出されてしまいます。
カテキン類でも抗がん作用があるといわれるEGCGは脂溶性であるため、お茶を飲むときには油を使って調理したものや油脂類の食品を一緒に摂取すれば、EGCGの吸収率が上昇します。
脂溶性の栄養素には例えばビタミンA、ビタミンEといった脂溶性ビタミンがあり、これらの脂溶性ビタミンもカテキンと同様に油と一緒に摂取しなければ吸収率が低下します。
脂溶性の成分はその名の通り油に溶ける性質がありますが、油に溶けることによって腸管から油ごと吸収される性質があります。