褐色脂肪細胞内のミトコンドリアの役割
褐色脂肪細胞にはミトコンドリアという細胞小器官が存在しています。
ミトコンドリアは真核生物(動物、植物、菌類、原生生物)の細胞質の中に分散して存在していて、細胞がエネルギーを生産する場となります。
一説には、細胞内のミトコンドリアは大昔には独立した生物(好気性細菌)であって、これが進化する過程で細胞内に取り込まれて共生する関係に至ったとされています。
ミトコンドリアは活発に融合・分裂を繰り返すことにより自己増殖します。
ミトコンドリアはエネルギー代謝の中心
ミトコンドリアは細胞において、エネルギー代謝の中心的な役割を果たします。例えば人間を含めた動物など、酸素呼吸によって生命を維持する生物にはミトコンドリアの果たす役割が欠かせません。
呼吸で取り込む酸素の90%以上は、ミトコンドリアで利用されるともいわれています。
ミトコンドリアには呼吸に関係する一連の酵素が含まれていて、これによって細胞がエネルギーを生産します。褐色脂肪細胞が自ら熱エネルギーを発生させるしくみも、ミトコンドリアがあってのことです。
私たちの体の中では、ATPという物質が絶え間なく生産されています。
ATPとは活動に必要なエネルギー源の大部分の役割を占めるもので、体内でATPが生産されて同時にこれが消費されるために生命が維持されています。
例えば心臓が鼓動するために必要なエネルギー、立ったり歩いたりするエネルギー、脳で何かを考えるエネルギーでさえもATP抜きでは考えられません。
私たちが何かを食べてエネルギーを摂取しても、そのエネルギーをそのままの形で利用することはできません。炭水化物でもたんぱく質でも脂質でも、体内でエネルギー源として活用するためには必ずATPに変換する必要があるのです。
一日に生産されるATPの量は、体重に相当する量であるともいわれています。このATPを体内で生産(合成)する部分が、ミトコンドリアと言う細胞内小器官なのです。
ミトコンドリアは活性酸素も生み出す
ミトコンドリアは生命維持に欠かせない重要な役割を担っていますが、これと同時に生命維持にはマイナスの作用も果たしてしまいます。
ミトコンドリアが酸素を利用してエネルギーを生産しなければ生物は生存できませんが、このミトコンドリアの活動は、同時に活性酸素も一定の割合で生み出します。ゆえにミトコンドリアは諸刃の剣としての存在ともいえなくもありません。
老化現象や生活習慣病の発生も、ミトコンドリアがエネルギーの生産と引き換えに生み出す活性酸素が一つの原因であるともいわれています。