糖尿病腎症とは?
糖尿病腎症とは高血糖の持続で引き起こされる、糖尿病の合併症の一つです。
血糖値の上昇が持続すれば、腎臓の尿をろ過する機能の部分である糸球体に変化が起こり、しだいに尿を作る能力が低下していきます。最終的には、腎不全になって尿が作れなくなります。
尿が作れなくなると人工透析の機械によって、血液をろ過して不要な成分を取り除くことが必要になります。人工透析を行うには一週間に2、3回病院へ通うことになりますので、日常生活に大きな影響を及ぼしてしまいます。
糖尿病腎症は現在では、人工透析を受ける原因の一位になっています。
糖尿病腎症の進行
糖尿病腎症は糖尿病から、5年以上経過した頃に発症する場合もあります。
これは比較的早期に糖尿病腎症を発症する例ですが、血糖値のコントロールがうまく行われなかった場合には例外ではありません。糖尿病腎症の始まりは、微量のたんぱく尿を観察することで発見されます。
糖尿病腎症から数年ほど経過した頃にはたんぱく尿も多くなり、ネフローゼ症候群とともに血圧も上昇します。このまま5~10年ほど治療が不十分であれば、慢性腎不全に移行して人工透析を受けることになります。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは多量のたんぱく尿により血清たんぱくが減少し、体がむくみ(浮腫)を生じる症状を特徴とする糸球体の病気のことを指します。糸球体がたんぱく質をろ過してしまうため、たんぱく尿が発生することとなります。
血清たんぱく
血液は血餅(凝固して沈殿物する成分)と血清(液体成分)に分けられます。血清の中に含まれるたんぱく質(アルブミンやグロブリンなど)は、血清たんぱくと呼ばれています。
血清たんぱくが減少することにより、全身の抵抗力や免疫力が低下します。このような状態では、細菌やウイルスに感染しやすくなってしまいます。
糖尿病腎症の治療
糖尿病腎症の治療で最も大切なことが、血糖のコントロールです。そのためには食事療法を適切に行うことが大切です。
食事療法の他にも糖尿病治療薬の服用や、症状が深刻であればインシュリン治療も必要です。糖尿病腎症の進行を遅らせる(腎不全に進行させない)ためには、高血圧の治療も必要です。
糖尿病腎症における食事療法では、糖尿病の食事療法に加えてたんぱく質の制限が伴います。
糖尿病の食事療法では血糖値を抑制するために糖分の制限を行うのですが、糖尿病腎症ではネフローゼを悪化させないためにたんぱく質の制限が必要となります。糖尿病腎症におけるたんぱく質の摂取量は、1日に体重1kg当たりで1~1g以下が原則となります。